「6つのフランス組曲」は、
J.S.バッハのクラヴィーア作品の一つです。
ピアノを習う人は、
「インベンションとシンフォニア」
「平均律クラヴィーア曲集」
を勉強する場合が多いと思います。
以前投稿した「インベンションの解説」の記事に、「フランス組曲」で検索されて、
ご覧になる方も多くなってきていますので、
今回は、
バッハのクラヴィーア作品「フランス組曲」についてお話します。
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「フランス組曲」の難易度は、こだわらなくてOK!!
恐らく「フランス組曲」は、
「インベンションとシンフォニア」を学んでいる時に弾けるレベルだと思います。
でも、
色々な小曲が登場しますので、
難易度にこだわらずにさらってみるのもいいでしょう。
![](https://yellow-gerbera.com/wp-content/uploads/2021/02/1612259038011.jpg)
例えば、
「ガボット」や「メヌエット」は、
初めての人でも馴染みやすいと思います。
ただし、
「フランス組曲」は様々なバロック時代の舞曲が登場します。
難易度以前に、
各舞曲の特徴を把握しておかなければなりません。
もし、
難易度にこだわるのでしたら、
『プレ・インベンション(全音出版)』等の楽譜で簡単な舞曲に馴染むのもいいでしょう。
また、
バロックダンスの動画を見て、
各舞曲の特徴を把握するのも近道だと思います。
バロック組曲の構成
バロック組曲では、
下記の4つの基本舞曲を組み合わせる事が基本になっています。
- ①アルマンド
-
「ドイツ風」の舞曲。
フランス様式で16分音符で書かれているが、
急いで弾いてはならない。 - ②クーラント
-
不規則な「フランス型」と
規則的な「イタリア型(コレンテ)」がある。 - ③サラバンド
-
豊かな和音と精巧な装飾を持つ舞曲。
テンポがいっそうに遅い様式。
17世紀のサラバンドのテンポは速かった。 - ④ジーク
-
ギクシャクした付点リズムをもつ「フランス型」と
3連音符で書かれた「イタリア型」がある。※イギリス型(ジグ)もあるが、イタリア型に似ている。
③「サラバンド」と④「ジーグ」の間に、
ギャレントリーが入るのが基本的な構成になっています。
【ギャラントリーで使用される代表的な舞曲】
「メヌエット」
「ガボット」
「ブーレ」
「アングレイス」
e.t..c…
「フランス組曲」のギャラントリー
フランス組曲各曲のギャラントリーは、
下記の通りになっています。
作品 | 作品番号 | ギャラントリー |
---|---|---|
1番(二短調) | BWV812 | メヌエットⅠ・Ⅱ |
2番(ハ短調) | BWV813 | エール、メヌエット( Ⅰ・Ⅱ )※1 |
3番(ロ短調) | BWV814 | アングレイス、メヌエット(トリオ付き) |
4番(変ホ長調) | BWV815 | ガボット、メヌエット、エール |
5番(ト長調) | BWV816 | ガボット、ブーレ、ルーレ |
6番(ホ長調) | BWV817 | ガボット、ポロネーズ※2、メヌエット、ブーレ |
※2:ロマン派で有名なポロネーズとは様式が違います。
5番の「ガボット」はよく耳にする曲だと思います。
フランス組曲のギャラントリーは、
優しい曲もあります。
まずは抜粋してみて、
それらの曲から挑戦するのも一つかもしれません。
バロック組曲の特徴
バロックの全て舞曲は、
前半と後半に大きく分かれています。
前半・後半それぞれ、
繰り返しが有ります。
前半の終わりで1回転調して、
後半の途中で1回転調します。
最後に原調へと戻っていきます。
なので、
転調する部分を確認すると弾きやすくなるかもしれません。
【補足】「イギリス組曲」の難易度について
よく、
「フランス組曲」と「イギリス組曲」の難易度について比較されるケースがあります。
確かに「イギリス組曲」の方が音数が多くて、
難しいイメージがあります。
チェンバリストの曽根麻矢子さんは、
「イギリス組曲に比べて、音の単純なフランス組曲の方がデリケートすぎて難しい」
と主張されています。
どちらとも特徴がはっきりしている組曲集になりますので、
先ほども申し上げましたが余り難易度にこだわらない方がいいかもしれません。
「イギリス組曲」では、
「アルマンド」の前に「前奏曲」があります。
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ただし、
ピアノとチェンバロではタッチが違います。
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ピアノではサスティンペダルが使えますが、
チェンバロでは、
フィンガーペダルを意識しなければなりません。
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ピアノの場合でしたら、
音数が少ない「フランス組曲」の方が弾きやすいかもしれません。
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因みに、
北村は「イギリス組曲」の前奏曲が好きです。
「フランス組曲」で弾きやすい曲は…
フランス組曲は、
元々チェンバロの作品になります。
ピアノとチェンバロは音を出す構造が異なりますので、
弦を叩くピアノで演奏するのはちょっと大変かもしれません。
6つの曲の特徴をお話します。
セットで弾く場合の参考にしていただけましたら幸いです。
(あくまで、北村の考えです…)
作品 | 特徴 |
---|---|
1番(二短調) | ・曲数は少ない。 ・「クーラント」と「ジーグ」はフランス型。 ・慣れていない人には難しいかもしれない。 ・「メヌエット」は、Ⅰ・Ⅱ共に3声。 ・フランス組曲の「メヌエット」の中で、難しいかもしれない(でも、旋律が美しい曲)。 |
2番(ハ短調) | ・「アルマンド」は、右手2声部の練習曲に最適。 ・「クーラント」がイタリア型なので、若干弾きやすいかもしれない。 ・「ジーグ」がフランス型 |
3番(ロ短調) | ・「アルマンド」が2声のインベンション型 ・「クーラント」がフランス型 ・「クーラント」が難しいならば、4番・6番の次に挑戦するのも一つ。 |
4番(変ホ長調) | ・難易度は全体的に優しめになっている。 ・「ガボット」が少し難しいかもしれなし。 ・個人的には、「フランス組曲」を初めて弾く人には馴染みやすいかもしれない。 |
5番(ト長調) | ・良く弾かれている曲。 ・最初に弾く人も多いが、あまりお勧めできない。 ・「ジーグ」が難しいかもしれない。 ・「ルール」はテンポに注意。 |
6番(ホ長調) | ・曲数が多いが、「アルマンド」が2声なので馴染みやすいと思う。 ・セットで考えると、馴染みやすいと思います。 |
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試しに、
第2番(ハ短調)の「アルマンド」を、
ピアノで弾いてみました。
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少しミスタッチがありますが、
ご了承下さい…。
先程の表にも記載していますが、
2番の「アルマンド」は、
右手で2つの声部を表現する練習にもなります。
ピアノはチェンバロと違って、
強弱がハッキリ出やすい楽器ですので、
テクニック向上の近道になるかもしれません…。
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もし、
難しくて挫折しそうな場合は、
ブルグミュラーの
『18の練習曲(Op.109)』
にある9番「朝の祈りの鐘」
を弾いてから挑戦しましょう。
「フランス組曲」楽譜の選び方
元々この曲の一部は、
「アンナ・マグダレーナ・バッハの為のクラヴィーア小曲集」に入っていました。
「フランス組曲」の6つの組曲は、
バッハ自身の手によって1曲の曲集としてまとめられた形で遺していません。
ベーレンライター版では、
アルトニコルの伝承によるA稿と装飾の多いB稿があります。
バッハの楽譜は、
ヘンレ版を勧めているケースが多いと思いますが、
第2番(ハ短調)のメヌエットはⅠのみになっています。
出版者によって、
メヌエットⅡが入っている楽譜があります(小曲ですが、綺麗な曲です☆)。
また、
ベーレンライターB稿の第6番(ホ長調)のアルマンドの前に、
プレリュード(「平均律クラヴィーア曲集第1巻」のホ長調)が含まれています。
実際に目でみてから、選んだ方がいいかもしれません。
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