「平均律クラヴィーア曲集」の難易度について考えてみる(J.S.バッハ)

『平均律クラヴィーア曲集』は、
J.S.バッハ(1685-1750)の鍵盤楽器の作品です。

ピアノを専門的に勉強されている人にとって、
旧約聖書」と例えられる程、
必ず避けられない教材になります。

因みに新約聖書は、
ベートーヴェンのピアノソナタを指しているようです。

北村

実は、
『平均律クラヴィーア曲集』については触れないつもりでした。

北村

ただ、
『平均律クラヴィーア曲集』について、
中にはいい加減なサイトが存在しているのも事実です。

今回は、
バッハの作品『平均律クラヴィーア曲集』の特徴・難易度・おすすめの曲などについてお話をしたいと思います。

Sponsoed Links

目次

『平均律クラヴィーア曲集』の落とし穴

「この作品集は、平均律で調律された音楽だ」
と思われがちですが、全然違います。

平均律の調律が誕生したのは、かなり後の産業革命辺りになります。

では、
何故平均律と呼ばれているのか…?

この作品の原語タイトルは
“Das Wohltemperierte Klavier”

英語では
“The Well-Tempered Clavier”

日本語で直訳すると「快く調律されたクラヴィーア」になります。

北村

あくまで個人的な考えですが、
バロックでは珍しく、全ての調性を利用した作品。

北村

日本語の解釈の関係によって、
『平均律クラヴィーア曲集』とやむ負えず解釈してしまったのかもしれません。

前回「純正律と平均律の違い」でお話しましたが、
当時バロック時代の調律はミーントーンで調律されていました。

ミーントーンによって、純正律で転調が難しい欠点をカバーする事が出来ます。

しかし、
調号(♯や♭)が多くなると濁ってしまう為、大体3つや4つの調号(♯♭)の曲が限界になります。

アンドレアス・ヴェルクマスターが『音律論』(1961)において「快く響く調律法」を提唱したように、
現在の平均律に近い調律法を追及していたようです。

また、バッハの弟子であるヨハン・フィリップ・キルンベルガーも音律について追及されています
(彼の音律はバッハの死後に発表されています)

それらの調律を「ウェル・テンペラメント」と総称される場合もあります。

バロック時代の後半になると、
J.C.F.フィッシャーの曲集『アリアドネ・ムジカ』(20の長短調を使用した作品)の様に、
新しい試みをする作曲家が増えてきました。

バッハもその影響に刺激受けて、
24の長短調を使用した作品に挑戦したのが『平均律クラヴィーア曲集』です。

北村

因みに、
現在の平均律は、「イコール・テンペラメント」と呼ばれています。

『平均律クラヴィーア曲集』の特徴

『平均律クラヴィーア』は第1巻と第2巻に分かれています。

それぞれ、全ての調性を利用した24曲です。
1つの曲は「前奏曲(プレリュード)」「フーガ」で構成されています。

第1巻は、
息子さんの教育用として作曲された練習曲的な要素が強いです。

第2巻は晩年に作曲されており、
第1巻と違って型にはまっている要素を感じます。
前奏曲ではバロックソナタ形式を利用した曲が目立ちます。

『平均律クラヴィーア』曲集の難易度は…

バッハの『シンフォニア』をマスターした後に、
取り掛かるレベルだと考えたほうがいいでしょう。

『平均律クラヴィーア』には、
2声~5声の「フーガ」があります。

『シンフォニア』は3声の曲になります。
それをマスターすれば、「フーガ」も少し楽になります。

ただし、
ピアノを専門的に学ぶ人は必須です。
大学の受験の課題曲で必ず必要になります。

北村

・「前奏曲」と「フーガ」をセットで弾く
・「フーガ」だけを弾く

学校によってバラバラです。

北村

また、
ショパンの『エチュード』とどちらかを選択する学校もある様です。
必ずしもバッハが必須とは言い切れません…。

『平均律クラヴィーア曲集』の弾く順番

恐らく、
第1巻から始める人が多いと思います。

難易度は24曲バラバラになっています。

「前奏曲」と「フーガ」をセットで弾くか、
「フーガ」だけを弾くかによって難易度が変わります。

例えば、
有名な第1巻1番のハ長調の「前奏曲」は優しいですが、
「フーガ」は難しいです(4声でテーマがしつこく登場します)

平均律初心者の人が弾くと挫折する可能性もあるかもしれません…。

また、
「前奏曲」が難しいパターンもありますので、

セットで弾く場合は、
2曲ともバランスがいい曲を選ぶのがいいかもしれません。

北村

初めての場合は、
3声の「フーガ」の曲をベースに選ぶといいでしょう。

北村

2声のフーガの曲は、
第1巻10番のホ短調のみです。

北村

ただし、
いやらしい半音階的な動きがありますので、
ちょっと難しいかもしれません。

ただし、これから申し上げるのは個人的な考えです。
あくまでご参考までにとどめておいて下さい。
※ピアノを習っている人は、必ず担当の先生と相談しましょう。

「前奏曲」と「フーガ(3声)」のバランスが取れている曲

第1巻では、
2番(ハ短調)・6番(二短調)・9番(ホ長調)・11番(ヘ長調)・13番(嬰ヘ長調)・21番(変ロ長調)になります。

第2巻では、
15番(ト長調)・19番(イ長調)になります。

北村

第2巻の場合、
「フーガ」のテーマが長い曲が特徴になります。

北村

初めて弾く場合は、
第1巻6番(ニ短調)をおススメします。

北村

6番のフーガは、
逆行テーマも登場して、弾きやすい形になっています。

北村

第1巻の2番・11番・21番の前奏曲は、
チェンバロの弦をはじく要素が強い曲なので、
ピアノで弾く場合は苦戦するかもしれません。

北村

「フーガ」のみを練習する場合は、
第1巻の6番と2番と11番がおススメです。

まずは、
上記数曲の3声フーガになれるといいかもしれません。

4声フーガの導入にふさわしい曲

『平均律クラヴィーア曲集』は、
主に3声フーガと4声フーガが中心になります。

4声フーガには、
難易度が高い曲がたくさんあります。

北村

4声フーガを始める場合は、
第1巻の16番(ト短調)をおススメしています。

北村

第1巻の16番のフーガは4声ですが、
3声で演奏する部分が多いので、なじみやすいと思います。

北村

第1巻の5番(ニ長調)も、
テーマがハッキリしていて弾きやすいです。

北村

第2巻7番(変ホ長調)のフーガも弾きやすいと思います。
ただし、
後半の中声にあるテーマを上手く表現できるかがポイントです…。

主題「テーマ」のバリエーションにお勧めな曲

「フーガ」では、
拡大テーマ・逆行テーマ・縮小テーマなどの技法があります。

第1巻8番(嬰二短調)のフーガでは、
拡大テーマ・逆行テーマが登場します。

3声ですが、
やや長くて調号が複雑な曲になっています。

テーマのバリエーションを勉強したい場合は、
第2巻2番(ハ短調)がおススメです。

このフーガは短い曲で、
後半から拡大形・逆行系が楽しめます。

北村

この曲は4声フーガですが、
前半は3声になります。

北村

後半から4声になるので、大変かもしれません。
第1巻の16番(ト短調)の後に練習するのもいいかもしれません。

北村

縮小テーマは、
第2巻9番(ホ長調)のフーガがあります。

複数のテーマ(主題)をマスターするために…

難易度が高すぎる5声フーガは、
第1巻の4番(嬰ハ短調)と22番(変ロ短調)があります。

特に4番(嬰ハ短調)の場合、
3つの主題が登場します。

複数のテーマを勉強する場合は、
第2巻14番(嬰ヘ長調)のフーガをマスターする事をお勧めしています。

この曲は3声でやや長めですが、
それぞれ3つのテーマの個性がはっきりしているので分かりやすいからです。

北村

第2巻18番(嬰ト短調)のフーガでは、
2つの主題が登場します。

北村

主題は長めですが、
こちらもチェックするのもいいでしょう。

『平均律クラヴィーア曲集第1巻』6番「フーガ」の弾き方

YouTubeに、
第1巻6番(ニ短調)の「フーガ」の弾き方やペダリングのポイントを
アップロードしました。

奏法や解釈は、
様々ですが、
ご参考までにお願いします。

苦手な人も、
挑戦のきっかけになりましたら、幸いです。

楽譜の選び方

基本的にバッハの楽譜は
「原典版(Urtext)」をおススメしています。

ただし、
『平均律クラヴィーア曲集』はピアノ・フォルテの為の曲ではないので、
お助け教材として「校訂版」を使用するのもありだと思います。

しかし、
校訂版で注意したい点があります。

それは第1巻8番(変ホ短調)

原版のフーガでは異名同音の嬰ニ短調で書かれていますが、
変ホ短調で修正している楽譜が存在します。

春秋社版の井口氏の補足によると、
「変ホ短調の方が見やすいと思う」と記載されています。

どちらが正解かは不明ですが、
出来ればオリジナルの嬰二短調も見てみた方がいいでしょう。

・バッハ全集といえばベーレンライターですが、
指使いの記載が無い為、あまりお勧めは出来ません。
(チェンバロ・オルガンを弾く方にはおススメですが…)

編集:市田 儀一郎
¥3,300 (2021/08/26 12:09時点 | Amazon調べ)

Sponsoed Links

ピアノ教育関連記事

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントを残す

目次